乳がん闘病中の母が抗がん剤治療で一番大変だったこと

私の母は昨年、がん治療の本を読み、検診で左乳房に悪性腫瘍が見つかり、総合病院で乳がんと診断されました。幸い、ステージ1の初期で、温存手術で抗がん剤治療は必要なし、と医師に言われました。家族全員が安堵していたところ、手術をした後にリンパ節への転移が見つかり、抗がん剤治療を勧められました。母は美容師をしていたので、抗がん剤による脱毛がどうしても受け入れられないようで、抗がん剤治療をしなくてはいけない、という医師の言葉を聞いた後、急にふさぎ込むようになり、治療をしたくないと言い始めました。
家族としてはやはり母に抗がん剤治療を受けて欲しいと願っていましたし、しっかりと治して欲しいという思いだったので、娘である私が母には内緒で、母が治療を行っている総合病院の「がん支援センター」に出向き、看護師さんに相談をしました。母が抗がん剤による脱毛を受け入れられないこと、それによって治療が前向きに出来なくなっていることを正直に話しました。看護師さんはとても優しく話しを聞いてくれて、後日母を連れてがん支援センターに行くことになりました。お茶を飲みながら無理強いをする訳でもなく、母の胸の内を頷きながら聞いてくれた看護士さんは脱毛の辛さよりもこれから何十年と待っている明るい未来を優しく諭すように話して下さいました。
抗がん剤の副作用もとても大変なものでしたが、それよりも本人が治療に前向きに取り組める心、環境づくり、そして「がん」というものになってしまった患者に寄り添って受け入れることが何よりも大切で、母が前向きに抗がん剤治療をしてくれた今、本当に良かったと思っています。
がんになってしまった母の心を保ち、そして支えることが家族としては一番大変なことでした。